私達の街歩きは、新型コロナウイルスの感染拡大に対応し、2月中旬を最後に、自粛を続けております。3月2日に全国の学校の休業の要請が出され、4月7日に緊急事態宣言が発せられ、3つの密を避け、不要不出の外出を止めるよう求められています。私達の街歩きはしばらくお休みを続けますが、感染拡大が落ち着き、感染の心配がなくなりましたら再開したいと思います。それがいつになるか分かりませんが、その間、各自、感染拡大に加担せぬよう行動を律し、かつ、健康を害したりしないよう、過ごしてください。
私達にとっては、新型コロナウイルスの情報に接した時、それが信じるに足るものかどうか適切に判断することが非常に重要です。山中教授はその心配をして、信頼度・検証の有無を明示した情報の発信を「山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」というサイトで行っています。又、厚労省には、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の見解等(新型コロナウイルス感染症)」というページがあります。そういう様々なサイトを参考に、将来再開にあたっての判断材料とするため、また、備忘録としての意味もあり、以下に、感染のからくり、政府の出すいろいろな指標などがどのような意味を持つのか、等について少し考えてみましたので下に書いておきます。
今回の外出自粛は、自分が感染しないためでもありますが、それよりも他の人に感染させないことが重要な視点であることを最後に書きます。これは、道義的な意味ではなく、統計的な意味として書いてあります。
なお、以下の記述において、引用を明示していない図は政府の使った図です。又、少しですが、私の類推を書いた部分がありますが、その論点については、皆様において調査・検討され、無条件で信じることのないようにお願いします。同時に、誤りなどありましたら、ご指摘下さい。即刻修正いたします。
又、この記事において、AFさんから、感染者と陽性者の定義が曖昧だとの指摘がありました。以下のようにご理解下さい。現時点でメディアでよく使われる「感染者」では、累積の場合はPCR検査での陽性者とそこから回復した人を含んでいます。この記事での「全感染者」あるいはそれと類似の表現の場合は、PCR検査での陽性者と抗体を持った人全てを表します。又、「陽性者」とは、感染者とほぼ同じ意味で使われる場合があり、又更に、PCR検査で陽性になった人と抗体検査で陽性になった人のいずれか又は両方を含む場合があります。
< 感染者数について >
日本国内や世界で日々発表される感染者(陽性者)数は信用できるのか、という疑問が常に生じます。日本においては、PCR検査数が少ないことが常に批判されています。諸外国においては、感染爆発が生じているらしいところもあり、検査数が多くても感染者数には依然として信頼性に疑問の残る場合もあります。
そうであるならば、発表される感染者数はデタラメかというと、私としては、以下の点を考慮すると、一つの指標として参考にできるのではないかと考えています。なお、この項で、説明なしに感染者と書いてある場合はPCR検査の結果陽性とされた人のことを指します。
- ある条件下で、感染者数の変化は感染拡大の傾向を表しているだろう。
- 検査陽性率(検査で陽性と判定された人の数/PCR検査数)は、感染者数の信頼度がある程度わかる。
- 検査で陽性になった人の内、無症状の人の割合が半分に近ければ、陽性者の割り出しという意味で、PCR検査はある程度信頼できそう。
- コロナによると発表された累積の死者数をもとに、検査されていない陽性者(潜在陽性者)も含めた全陽性者の数が、ある程度類推できる。
なお、感染者数などのデータは、ばらつきが大きいので、日々のデータで何らかの判断をすることは避けなければなりません。少なくとも、数日、あるいは週の単位で平均化して傾向を判断することが大事です。
1.については、ある地域で、ある時間において検査体制が大きく変化しない限りは、感染者数の変化は感染傾向を表しているだろうと思われます。検査体制の変化とは、検査の仕組み、検査数の大幅な変化などが考えられます。日本のように重症者を重視したPCR検査体制では、重症者・中等症者などの患者はある程度捕捉できそうですが、軽症者・無症状者は相当な見落としが生じそうです。
2.については、東京都では20%に近い高い値を示しています。日本国内の平均は10%程度です。この値は、検査数をめちゃくちゃ増やした場合に、現状(国内の累積の死者数が200人規模の場合)ではおそらく0.1%のオーダになると思われる数値です。従って、検査数をむやみに増やすことは無駄かと思いますが、少なくとも数%程度あるいは1%程度にはなるように検査数が増えているとデータの値に、もう少し信頼が持てるようになりそうです。つまり、医者が検査必要と診断した場合、又、不安を感じる場合には検査が受けられるようになってもらいたいものと思います。ただし、そこまで増やすには、検査現場、医療現場が混乱しない体制を整えておく必要があります。それにしても、諸外国では多数のPCR検査が行われていますが、何故それが可能なのか知りたいところです。
3.については、ダイヤモンド・プリンセス号での陽性者の内、無症状の人が50%程度いたことが根拠です(上記山中教授のサイトなど)。但し、サンプル数が少ないため、信頼度が若干下がるだろうことはやむを得なませんが、閉じられた空間でのデータであることは極めて貴重です。4月18日現在、厚生労働省の発表によると (新型コロナウイルス感染症の国内発生動向)、陽性とされた人の内、無症状は1割以下のようです。症状確認中が多数いることになっていますが、その意味は分かりません。いずれにしても多分、発表されている無症状者の数はかなり低い値であり、PCR検査が不十分であることを示唆しています。が、今までの日本のPCR検査が重傷者を主な対象にしていること、軽症者・無症状者はなかなか検査してもらえないことを考えると、こんなものかな、という感じもします。
4.について、つまり、累積の死者数から潜在的な陽性者も含めた全陽性者の数が推定できる、という根拠は、推定致死率(=コロナにより死亡した人の数/未検査の陽性者も含む全陽性者)がある一定の値を持つだろう、という仮定によります。この値がはっきり分かるのは、収束した後の疫学的研究を待たねばならないとは思いますが、下記のサイトによると、ファウチ等の発表(下記サイトを参照)では、推定致死率は0.1~1%と書かれているようです。なお、安定した治療が行われている場合、あるいは、有効な治療薬が見つかった場合には、死亡者の割合が更に減る(例えば0.01%のオーダー)可能性は十分にあります。
新型コロナウイルスに関する一考察(1):重要な3つの変数「基本再生産数」「致死率」「今後の死亡者数の月次推移」
上で述べた推定致死率に対し、従来発表されている致死率は、検査致死率(=コロナが原因と推定される死亡者の数/陽性と判断された人の数)です。これは、感染拡大の初期、混乱期、終息期でも変わり、医療体制によっても変わる値です。現在迄のところ、欧州では軒並み10%を越えており(ドイツは2~3%)、米国・中国は5%程度、韓国・日本は2%程度です。5%以上の高い値を示している場合は医療崩壊が起きている可能性があり、それ以下の場合は未だ医療崩壊には至ってはいないものと思われます。従って、日本の検査致死率は諸外国に比べ、言われるほど外れた値でもなさそうです。
なお、上で推定致死率と書いた真の致死率(コロナで死んだ人の数/検査されない人も含む陽性者の数)を知るには、収束した後の疫学的研究を待たねばならないと思います。PCR検査をどれほど大量に行っても分からないでしょう。というのは、PCR検査は現在体内にウイルスがあるかどうかを調べる検査法ですので、ある時点での感染者が分かるだけだからです。従って、今後抗体検査(感染した人が体内に作る抗体の有無の検査)をして統計的(疫学的)データを集めていく必要があります。なお、推定致死率が0.1%とすると、日本では現在コロナによる死者は200人余りですので、日本に潜在する陽性者は20万人以上になるかもしれません(後述の時間差を無視しています)。
死亡者数を使う際にはいくつか注意を要します。一つは、コロナで死亡した人がすべて把握されているか否かということで、もう一つは他の検査値との時間差です。前者については、死因が通常の肺炎あるいは不明とされた人の中にコロナによる死者はいないのか、という疑問や、特に医療崩壊がおきている場合には死因の特定されていないケースがやたらに多くなるのではなかろうか、という疑問です。しかし、安定した医療が行われている場合は、CT検査などでコロナとそれ以外の肺炎は所見が違うので誤りは少ないというお話を聞いたことがありますので、日本での誤差は少なかろうと推定します。後者については、感染したとき、陽性と判定されたとき、死亡が確認されたときの間には時間差が生じることで、感染拡大の途中のように変化があるときは、各数値の対応には注意が必要です。
なお、発表されたいろいろなデータから何かを判断する際、複数のデータの関係について、「相関関係」と「因果関係」とを正しく区別することが重要です。この違いを見落とすと、誤った結論を出すことになります。
< 日本でのウイルス対策の基本方針 >
日本では、強力なロックダウンなどは行われておらず、緊急事態宣言でも、指定した施設に対する閉鎖要請と各人の行動自粛要請が基本です。これは、ロックダウンなどの強硬な手法を使わず、患者の増加のスピードを抑えることで、医療崩壊を避け感染を収束させる、という下図の太いピンク色の線を狙っています。
そのため、次に説明する基本再生産数(実効再生産数)をコントロールしようとしています。
< 基本再生産数(実行再生産数)と「接触を8割減らす」ことの関係 >
基本再生産数は、感染力を表す数値で、一人の感染者が(免疫の獲得あるいは死亡で感染力を喪失するまで)平均的に何人に感染させるかを表す値で、R0などと表されます。実効再生産Reは、感染者が増えてきた場合、あるいは、対策を講じた場合などに、基本再生産数を修正するための値です。用語については、上に掲載のサイト「新型コロナウイルスに関する・・・」を参考にしました。
R0は、1以上になると感染が拡大し、1のときに横ばい、1以下で収束に向かうとされており、これは定義から容易に理解できます。R0は、ウイルスにより、又、感染の初期、拡大中、収束中などにより変化し、また、政策や国民の行動パターンにより変化しますが、新型コロナウイルスについては、WHOは1.4~2.5と推定しているようです(上記のサイト参照)。なお、東京都では、3月には1.7程度だったとの推定もあるようです。R0=2.5という状況は、中国や欧米での感染爆発が起きた頃、つまり、国・国民が何ら対策を講じなかった頃に起きていたのではないかと想像されます。R0が1より十分大きな状態である程度経過すると、集団感染の効果が現れるまで、つまり、感染経験者が増え実効再生産数Reが小さくなるところまで増加します。どこまで増えるか、という点については後述します。
さて、国は、「最低7割、極力8割」人との接触を削減するよう要望していますが、厚生省の「クラスター対策班」の西浦教授は8割削減と言っています。下は、その際に使われる図です。
又、日経は下のような説明図を使っています。接触を6割減らしても横ばいです。8割減にすると一月程度でかなり収まりますが、7割減では2ヶ月程度かかります。この、6割とか8割とかいうのは、上のR0と関係付けるとよく分かります。
R0は、
I 一人の陽性者が一回の接触で他人に感染させる率
k 単位時間当たりの接触回数
T 感染力が継続する期間
の積で再定義できます。IとTはウイルスの持つ特性による値です。kは感染者の行動パターンによる値です。つまり、R0は接触回数に比例します。従って、何もしないときのR0が2.5だったとして、接触回数が6割減ると、kは0.4倍となり、R0は1.0となり、横ばいになります。8割減るとR0は0.5となり、急速に収束に向かいます。
上のような計算ではR0が変化してややこしくなりますので、西浦教授は、実効再生産数Re=(1-p)R0を導入し、R0を2.5に固定し、接触数削減の割合をpとしてReで説明しています。結果は同じです。なお、pは、感染して免疫のできた人の割合としても使えます。つまり、R0やReはその時々で柔軟に使われますので注意してください。例えば、ワクチンによって免疫のできた人の割合をpとすると、ワクチンで上のReを小さくできることを表せます。
接触回数を減らすためには、私達の行動変容が求められますが、PCR検査により陽性者を見つけ、無症状者・軽症者は自宅療養ではなくホテルなどに隔離する、という手法などを使うことによっても、Reを小さくすることができます。この方法を積極的に行ってもよい時期だとは思うのですが、、、そうすれば、院内感染、家庭内感染も抑制できますし。
< 収束に向かう条件 >
現時点(4月18日)では、感染が拡大中なのか、収まる気配をみせているのか微妙なところですが、ここで、どのような場合に収束するのか、といことを考えます。収束の条件は、下のようなことかと考えられます。
- Reが1より十分小さくなる。
- ウイルスに季節性があり、時期が来ると収まる。
- 集団免疫ができる。
- ワクチンができ、大勢に接種できるようになる。
1.については、人同士の接触をできるだけ減らすことが肝要ですが、どこまで実現できるかなかなか難しいところです。頑張って一旦落ち着いたとしても、感染者がわずかでも残っていると、国民が油断をすることによりReが増加し、また感染拡大が再開する恐れはあります。又、PCR検査を広く行い、検出された軽症・無症状の陽性者をホテルなどに隔離できるようになれば、Reを下げることができます。なお、感染して免疫を持った人の割合をpに入れると、3.の集団免疫の議論になります。
2.については、トランプ大統領もそのようなことを言っていましたが、このウイルスは、季節性インフルエンザとは異なるウイルスで、季節性があるかどうかは未だ明らかになっていません。
3.については、感染者が増えるとこの人達はもう感染することはないので感染が収束に向かうことが期待されます (多くの感染症の場合はそうなりますが、コロナはどうなのでしょう) 。これを集団免疫といいます。人口の半分程度感染すると収束に向かうようです。下にR0と集団免疫ができるときの感染者の割合Pcを示します(「新型コロナウイルス感染症の 流行予測」から引用。R0で記述されている)。普段の行動でR0が2.0程度で国民の半数が罹るようなケースでは、致死率が0.1%とすると、日本では、6万5千人(国民の0.05%)死ぬことになります(医療崩壊が起きるともっと増えます)。ワクチンが早く開発されないと大変なことになりますね。とはいえ、日本人の年間の死亡者数は百万人以上いますので、死因としては、20分の1程度だとはいえますが、、、
下は、R0の違いによるピーク時の感染者数です(上記の「新型コロナウイルス感染症・・」のサイトから引用)。横軸の1.0はR0=2.5に当たり、その場合、ピーク時の感染者は人口の15%に達するようです。
4.については、ワクチンにより感染しない人が増えるためにReが下がる、ということです。ワクチンは今盛んに研究が行われていることと思いますので、あと1年以内には使えるワクチンができあがるのでしょうか。期待しましょう。
< 外出自粛の意味 >
現在、治療薬もワクチンも未だ確立していません。治療薬として使えそうな薬もあるようですが、早く検証が済み使用できるようになるといいですね。ワクチンもできるだけ早くできることを願います。
そのような状況で、今私達に要求されているのは、外出自粛、3密を避ける、手をよく洗うことです。その理由は、私達自身が感染しないためであることは勿論ですが、もっと大事なことは、他の人に伝染さないためでもあります。そう考える理由は以下のとおりです。
まず、上に書きましたように、R0が2.0程度で推移し、1年間での死者が0.05%(6万5千人)となった例をここでも使います。その場合、日本人の年の死亡率は1%程度ですから、1%が1.05%に増える程度です。私達の世代(70~74歳)の男性の年間の死亡率は2.0%程度です。それに対し、高齢者のコロナによる死亡率は仮に4倍の0.2%とすると、死亡率は2.0%が2.2%に増えることになります。この増加を見て、なんだそんなものかと考えるか、それは大変だと考えるか、皆さんいかがでしょう。なお参考までに、4月18日現在、コロナによる年代別死亡率(コロナによる死者数/陽性と判定された人数)は厚労省の発表によると70代で5.2%、全年齢の平均で1.6%です(「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」から引用)。
そこで、次に、私達が行動変容を起こし、人との接触回数を6割減にするとR0は1となり、新規感染者数はほぼ横ばいとなります。8割減にすると、理論的には一月で収まりますので死者は何百人というところ(現在は累積200人ほど)になるのではないかと推定されます。その場合、私達の死亡率の変化は誤差の範囲内です。
ということで、人に伝染さないことがどれほど大事なことかおわかりいただけると思います。もうしばらく大人しくしていましょう。
< コロナ関連記事 >
このブログに書いたコロナ関連の記事は、以下のとおりです。
- 新型コロナウイルスへの対応
- 新型コロナウイルスへの対応 その5 「政府のコロナ対応戦略 -たぶんこうだったんじゃないか劇場-」
- 新型コロナウイルスへの対応 その6 「私達の出口戦略」
- 新型コロナウイルスへの対応 その7 「新しい生活様式」
- 新型コロナウイルスへの対応 その8 「人出のデータから今後の感染者数の傾向を予想する方法」
また、私の別ブログに書いたコロナ関連記事は、以下のとおりです。
Bachelor of Visual Arts Telkom University
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