表計算ソフトを使い、コロナ変異株に対するワクチンの効果をシミュレーションしてみた(更新停止中)
始めに
新型コロナウイルスについては、ワクチン接種が行われている一方、感染力の強い変異株が現れました。今後、これらがどのように関係し合うのか、また、感染傾向はどのようになるのか、非常に心配なところです。ここでは、表計算を用い、変異株、ワクチン、人出と感染しやすさの関係を1年ほどのスパンでグラフ化してみました。
<追記> 2022年5月に至り、複数の変異株、複数回のワクチンの接種率等、パラメータが多くなり、かなり恣意的な操作が必要になってきました。そのため、「感染しやすさ」を客観的に予想することは非常に難しい状態になったため、この記事の更新を6月3日を最後に停止することにします。
変異株とワクチンの効果
下のグラフでは、2021年から2022年にかけての、首都圏における変異株とワクチ接種の状況に応じた「感染の拡大しやすさ」を実線で表しています。これは、すべてのウイルスが従来株であり且つワクチン接種が行われていない状態に比べ、(週毎に)何倍感染しやすくなっているかを表しています。つまり、その時点での感染力(ウイルスの性質とワクチンの効果の合わさったもの)とみなせます。青色の破線はアルファ株(イギリスで最初に見つかった変異株)の占める割合を推定したもので、紫色の破線はデルタ株(インドで最初に見つかった変異株)の占める割合の推定です。灰色の破線はオミクロン株です。オレンジ色の実線は「感染の拡大しやすさ」を表しています。ワクチンの接種率は緑色の棒グラフで表していますが、ワクチン接種からの時間経過で感染予防効果が減るとらしいこと、ブースター接種の効果等を考慮し補正しています。又、オミクロン株の変異株の出現や、感染者の増加により免疫を持つ人が増えること等の種々の影響も考慮しています。
(2022/6/3更新)
人出と感染者の増減との関係
下のグラフは、渋谷の人出と東京都の新規感染者数の週毎の増加率の関係です。人出は、4,000人から10,000人について、その時々に応じた感染の拡大しやすさを「週毎の増加率」として示しています。増加率が1.0以上であれば感染者数は増加し、1.0未満であれば感染者数は減少します。なお、感染者数は、人出に対し、1.5週間~2週間程遅れて現れます。なお、渋谷の人出は、昨年夏ころから現在まで、週毎の平均では、4,500人から7,500人の間を変動し、それにより感染拡大減衰を繰り返していました。新規感染者数の長期的な予想をたまに目にしますが、新規感染者数は人々の行動等に大きく影響を受けますので、ひとつのシナリオを示すだけで長期的な予想としてはあまり当てになりません。ここでは、その代わりに、人出に対する週毎の増加率として将来の予測ができるようにしてあります。
(2022/6/3更新)
上のグラフの表現を少し変えて、感染者の週毎の増加率が1.0となる渋谷の人出をトレースすると下のグラフのようになります。2021年の始め頃までは、渋谷の人出数が6000を越すかどうかが感染者数増減の目安でしたが、変異株の影響やワクチンの効果で目安が大きく変化しています。11月頃までは渋谷の人出数の8000人程度というのが感染者数増加抑制の一つの目安でしたが、年が明けてからは許容限度が大幅に減少(つまり感染状況悪化)し、2月以降もワクチン接種が進まないとすると、状況改善はあまり期待できなさそうです。
(2022/6/3更新)
「変異株とワクチンの効果」のグラフについて
上のグラフを作成するに当たっての前提、および、グラフの見方の詳細は、以下のとおりです。なお、この記事の3月25日の初稿では、グラフではなく表で表していましたが、見やすくするために4月26日にグラフに変更しました。以下の記載は、初稿をベースにその後の更新を加えてまとめてあります。又、当初はアルファ株のみを考慮していましたが、6月25日にデルタ株の影響も追加しました。
まず、アルファ株については、感染力(週毎の増加率)は当初従来株の1.5倍としておりましたが、後日1.4倍に変更しました。デルタ株については当初従来株の1.9倍としましたが、逐次見直しをしており、最終的に1.75としてあります。変異株の感染力の推定に際してはその時々の変異株の割合を知りたいのですが、信頼に足るデータがありません。公に発表されるデータはあるものの、変異株感染者の周辺を重点的に検査した結果だろうと推定され、無作為抽出ではないため、信用できません。そのため、発表されているデータよりも低いものとしてあります。実際、西浦教授らの推定では、デルタ株の感染力は1.78倍とか1.95倍という値が発表されており、これを週毎の増加に換算すると2.5倍前後になりますので、1.75倍というのは相当低い値を使っていることになります。オミクロン株については週毎の増加率を2.5倍(実効再生算数で1.9程度)としてあります。変異株の性質については、今後新たなデータが得られ次第更新します。グラフ上で、変異株の割合はその月初めにおける推定値としてあります。なお、ウイルスは刻々と変化をしておりますので、ここで、アルファ株、デルタ株、オミクロン株と称しているのは、それぞれの株と同程度の感染力を持つウイルスの3つのグループと解釈して下さい。
ワクチンの接種率は、2回接種した人数の累積(月の中頃における値)を人口比で表しています(今月までの実績とその先は予想で表しています)。なお、ここでは、ワクチン接種により発症を抑え更に人への感染も抑える効果があるものと期待して計算しています(2021年3月29日の報道による)。ワクチン接種が非常に順調に進んでいますので、9月以降の「感染の拡大しやすさ」は急激に低下しています。
21年7月から8月にかけての第5波で累積の感染者数が30万人を越えていますので、9月から、検査で見つかっていない陽性者を含む全陽性者の免疫も考慮するようにしました。全陽性者数は発表される累積感染者数の5倍で、陽性者の感染抑制効果は0.4と仮定しています(あまり根拠はありませんが、まあこんなものか、という数値です)。
その他詳細
上の表を求めるに当たり、ワクチンの人への感染予防効果は90%(変異株に対してどの程度効果があるのかは不明ですが、従来株とほぼ同じものと仮定)としてありますが、ワクチン接種後時間とともにその効果が低下する、との報道もありますので、ある程度減衰を組み込んであります。なお、変異株の占める割合についてはいくつかの発表がありますが、大抵の場合、新たな変異株が見つかってしばらくの間はその濃厚接触者を中心に検査していることと想像されますので、変異株の割合が実際よりも高く出ているものと思われます。従って、どのような数値を使えばよいか非常に悩ましい状態が続いています。
なお、このブログの別記事「表計算ソフトを使い、東京都のコロナ感染症新規感染者数の2週間予測をしてみた」では、上のグラフの感染の拡大しやすさの指標を使って予測をしています。