くずし字学習4 楽しくなくちゃ
くずし字を読む力はすぐに着くものでもありません。継続することが大事です。そのためには、先ず、その時々の気分に応じて柔軟に対応できるよう、できるだけ興味の範囲を広げておくことも大事かと思います。
その上で、やる気にさせられる何かが欲しいところです。また、楽しくなくては続きません。どうしたら続けられるか、いろいろ工夫しました。
何が読みたいのか
くずし字の勉強といっても、対象はいろいろあり、それにより重点が変わります。対象としては、古典文学(大抵は写本)、古文書(狭義の古文書)、書道作品などが考えられます。
古典としては古代から伝わるものがたりの写本であったり、近世の木版による出版物と、様々なものがあります。古文書としては行政・支配における文書や手紙で、候文で書かれた文書が中心です。
私は、上のどれにも興味がありますので、対象にこだわらずに広く勉強をしていきたいと考えました。
モチベーションを維持しながら楽しむには
私は、モチベーションを高め、純粋に楽しめることを盛り込むことを試みました。
各人、背景、目標、経験などが異なるため、学習方法について一般論としての方法論はないだろうと思います。一人ひとりが自分なりの工夫することが基本になるでしょう。
そして、学問として研究するのでなければ自己流(自分に合った進め方、自分の好き勝手な進め方)でやっても問題はなさそうです。学習法は基本的には各人のやりやすい方法を使えばよいので、私のやり方が他の方にもあるか否かはまったく不明ですが、一応、私が試みた方法について書きます。
一つは、街歩きとWEBへのアップをくずし字学習とリンクしたことです。
もう一つは、楽しい古典を読むことを加えました。
くずし字読解の力がつくこと、知識が身につくこと、それ自体も、本来強力なモチベーションになるはずですが、実感として把握できるかどうか難しいので、これだけではなかなか困難かと思います。
街歩きとWEBへのアップ
具体的には、江戸時代の地誌(名所のガイドブック)を手に持って、書かれた場所をあちこち巡り、さらに、巡ったところの今昔をホームページなりWEBにアップする、ということを続けています。
先ずは自宅で、歩きたいところを読み理解することでくずし字の学習をし、街歩きの後、くずし字文書を確認しながら訪問記にするということで、記憶を確かなものにできます。
街歩きは健康増進の効果があると思われますし、インターネットで公開するために、記憶・記録・表現活動を行いますのでボケ防止にもなります。また、その結果を見てもらう、という喜びもあり、いろんな意味でモチベーションのアップ・継続に役立つと思います。
古典を楽しむ
古典を読み物とみなし楽しむことができます。
自分のレベルに応じて、何を読むか、いつ読むか、ということは異なりますが、楽しみながら読めます。
和歌が好きであれば、先ずは(入門コースとしては)百人一首の写本が最適です。歌は大体覚えていると思いますので、少々読めない文字があっても読めます。その内に慣れて平仮名をマスターできます。
その後は、古今集とか新古今集といった歌集が良いでしょう。知らない歌が多数出てきますが、なんとか読み進めることができると思います。ただし、解釈に関して不明なところが種々出ますので、手元に注釈書などを置いておくのがよいかと思います。
その他、江戸時代の大衆向けの出版物(概して振り仮名付きの木版印刷、読本・人情本。滑稽本など)は、漢字に平仮名が振ってありますので、平仮名が読めれば話の筋を負うことができます。漢字が読めなくてもなんとかなりますし、その内に漢字を覚えます。慣れてくるときてだんだん早く読めるようになります。私の愛読書は、滝沢馬琴の南総里見八犬伝や椿説弓張月などでした。これらは、100%理解する必要がなければ注釈本などが不要ですので、通勤電車の中、あるいはスキマ時間で読み続けることができます。
基礎力を養う
上に書いたような方法でモチベーションを高めながら、少し時間を割いてオーソドックスな勉強もすると良いでしょう。理論と実践の組み合わせは大事です。
- 講義に参加、WEB教材の活用など:何らかの古文書講座の初級コースには出席しておくほうがよいでしょう。
- 辞書を引く:この重要性は、どなたも力説しています。
- ツールの準備:携帯用のツールと家の中での使うツール。スマホ、タブレット、変体仮名一覧表等
- 翻刻の必要性:翻刻(書き下し)が大事、とよく言われます。しかし、常に翻刻が必要ということはないでしょう。その時のレベル、対象に応じて変えるのがよいと思います。確かに力は着くのですが、飽きてしまっては元も子もありません。
- 書き込みを入れる:翻刻と読み流しの中間とでもいえますが、くずし字文書を印刷し、要点に書き込みを入れるのもありです。書き込むことによる記憶の定着、読み直しの際の助け、などになります。
- 注釈書:適当な注釈書を用意するといいでしょう。歌集の解釈、平家物語や他の歴史書などは、官職名・仏教用語・年代など注釈書がないと分からない言葉が多いので、理解を深めるためには必要です。