絵本江戸土産(広重)第4編24、25&26 日暮里 諏訪の臺 、 其二 同所寺院庭中雪の景 & 其三 同所つづき

 絵本江戸土産の第4編の「日暮里(ひぐらしのさと) 諏訪の臺(すわのだい)」です。

 絵には「四時(しいじ)の眺望(ちょうぼう)あるが中にも、春は殊(こと)さら賑(にぎ)わいて、音曲(おんぎょく)の師(し)門人(もんじん)と引連(ひきつ)れここに憩(いこ)いて餉(かれい 食事)をひらく。実(げ)に遊楽(ゆうらく)の地というべし」とあります。

 「其二 同所 寺院庭中(ていちゅう)雪の景」です。

 上の絵には、「元来(もとより)寺院(じいん)林泉(りんせん)の風景(ふうけい)尋常(よのつね)にあらざるを、冬枯(ふゆがれ)に及びし雪の景色(けいしょく)宛然(あたかも)仙境(せんきょう)にいるの思いをなせり。これも一時(いちじ)の奇観(いかん)というべし」とあります。

 「其三 同所つづき」です。

 上の絵には、「古今集 けぬがうえに またもふりしけ 春霞 たちなばみゆき まれにとぞみめ」とあります。歌の意味は、「消えぬうちに、またもっと降り敷きなさい。春霞みが立ったならば 雪を見るのは稀になるのだから」という意味でしょうか。

 1枚目の絵の諏訪の台に描かれている神社は諏訪明神(現 諏訪神社)のようです。2枚目については、「其二 同所 寺院庭中」とありますので、素直に判断すると、諏訪明神の別当であった浄光寺の境内の風景かと思われます。浄光寺は雪見寺と呼ばれる雪景色で有名なお寺だったようですので、その可能性は高いといえます。

 ただし、「其二」に見える帆掛け船のような形をした樹(樹木のようです)は、江戸名所図会では修性院の庭に描かれている点が、疑問として残ります。

 参考まで、諏訪明神周辺の江戸名所図会の挿絵を下に載せます(「日暮里総図」というパノラマ画像の3枚めですが、表題には誤って「其一」と書かれています)。挿絵の左上に諏訪明神があり、その右(右端)に浄光寺があり、左下に修性院があります(名前はここでは省略されています)。修正院の堂宇の少し右側の境内に帆掛船のような形が見えます。広重は、浄光寺の雪景色を描く際に、帆掛船の形の樹を修性院からちょいと借用したのかもしれません。

 下は諏訪神社の鳥居です。奥に見えるのは拝殿です。

 下は、二ノ鳥居と拝殿です。

 下は、浄光寺の山門です。

 下は、修正院です。江戸時代は花見寺と呼ばれ、庭園の美しい寺院だったそうです。

 

 

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