「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」J.E.スティグリッツ (2002年)
今の世の中、経済格差が極端に大きくなり、グローバル資本主義経済がまともに機能しなくなっているように思えます。それでは、今後資本主義はどのようになればよいのでしょうか。様々な意見がありそうなのですが、整理するとすれば下のような感じでしょうか。
1.貧富の差の拡大は許容する
1-1 市場の自由競争優先(新自由主義、グローバル資本主義の継続)
1-2 市場介入(トランプ流のように関税をかけ自国第一主義)
2.資本主義を見直す(政策、法律を改正する)
3.資本主義に変わる制度を構築する
スティグリッツの「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」は2002年に出版されており、新自由主義とグローバリズムを批判しています。上の2.に位置していると考えてよさそうです。スティグリッツは更にIMFを猛烈に批判しています。確かに、昔、IMFが新興国に対して非情な指導をしていたことは覚えています。
2000年頃の私
スティグリッツがこの本を出版した頃、経済に関し私はどのような意識を持っていたのか、少し記憶を辿ってみました。
1990年頃、会社の経営陣は、会社は株主のものだと盛んに言っていましたので、それなら我々社員はなんの権利もないのか、と素直に疑問をいだいてもののそれだけのことでした。株主資本主義が明確になりだした頃です。その後、2000年前後は、何かというと「規制緩和」でした。そんな時代、今なら新自由主義の流れの中にどっぷりと浸かっていたのだ、と分かりますが、当時我々は経済とはそういうものなのかと、ただただ素直に従っていました。
そうはいっても、本当は貧富の格差の少ない社会、再配分を重視する社会が望ましいのだろうから、そのうち社会が豊かになり、理想の平等社会に近づくだろう、と想像していました。ところが現実の世の中は期待に反し格差がどんどん広がり続け、何か釈然としないものを胸に抱えたまま老人になりました。
「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」を読んでみて
さて、20世紀の終わり頃の新自由主義とグローバリズムを批判したスティグリッツの著書「世界を不幸にしたグローバリスムの正体」を引っ張り出し読み直してみました。ケインズを否定した新自由主義を否定し、ケインズを評価しています。実をいうと、私はこの本を20年ほど前に読んだはずなのですが、私の資本主義への問題意識が低かったのか、きちんと読んではいなかったのかよく分かりませんが、記憶が極めて薄くて今回新鮮な気分で読みました。当時、仕事がむやみに忙しくて本を読む時間はあまりなかったことは確かですので、中身は実は読んでなかったのかもしれません。
でも、この本を読み直し、昔はそういう時代だっこと、今の資本主義に対するしっくりしない私の気持ちの芽は何十年も前からあったことは再認識したものの、私は何をすべきかも分からず、ただ流されてきたことに改めて虚しさを感じています。