自作してみた!太陽光発電 2.ベランダ太陽光発電システムを作る
はじめに
この記事では、我が家のベランダで実際に太陽光発電を自作するために行った際の、システム検討、機器の選択、組み立てなどについて書いています。ソーラーシステムのDIYの紹介です。
このブログでの太陽光発電に関する記事は、この記事も含め、下の一覧のようなになっています。
- 自作してみた!太陽光発電 1.太陽光発電を始めるための準備
- 自作してみた!太陽光発電 2.ベランダ太陽光発電システムを作る
- 自作してみた!太陽光発電 3.独立型と系統連系型
- 自作してみた!太陽光発電 4.ソーラーパネルの規格と使い方
- 自作してみた!太陽光発電 5.バッテリーの規格と使い方
- 自作してみた!太陽光発電 6.チャージコントローラーの規格と使い方
- 自作してみた!太陽光発電 7.DC-ACインバーターとDC-DCコンバーターの規格と使い方
- 自作してみた!太陽光発電 8.鉛蓄電池からリチウムイオン電池に交換した
我が家の環境に合った太陽光発電は
我が家の状況
太陽光発電をする際に関連しそうなことを並べておきます。
・我が家は、集合住宅の9階で、日当たりはよいのですが、ベランダは南東向きのため、午後はすぐ陰ってしまいます。そのため、100W級ソーラーパネルを使っても、天気の良い日で、高々、70W✕5h≒350W程度しか発電できないものと思われます。
・ベランダは共有スペースなので、ソーラーパネルを固定して設置することはできません。また、ベランダの広さからして、パネルを1枚程度しか置けません。
・我が家の電話回線とインターネット回線は光です。光ケーブルで棟内共用スペースにあるMDF(Main Distributing Frame 主配線盤)まで届いているのですが、その先は一般の電源を使用して光ー電気変換をしています。そのため、各家庭にあるVDSLやルーターなどの関連機器の電源をソーラーシステムにしても停電時には使えないようです。
ソーラーシステムの基本設計にあたっては、好天が続いたときに満充電に近づけられるかどうか、日照のない日が続いてもバッテリーが持つかどうか、というのが太陽光発電システムを計画する際の課題です。平常時の電力発生程度と消費のバランス、災害時の必要電力が賄えるか。というのがシステム設計の勘所ですが、さじ加減がなかなかむ難しいといえます。使いながらいろいろ試す、ということになるのかもしれません。
太陽光発電で賄いたい機器
停電時は
・照明 数十W
・携帯・スマホ・タブレットの充電
・パソコンの電源(スマホでテザリング) 数十W
・ラジオ
・ワンセグ受信機 数十W(我が家は地デジの受信環境がよくないので、ケーブルテレビになっています。停電時はアウトです。ワンセグ受信機があれば、災害時に使えるかもしれません)
といったところでしょうか。
従って、停電になったとき、1日で数百Wh程度は消費しそうです。
平常時は、
・ノートPCの電源 30W✕3h≒100Wh
・亀の水槽のフィルタ用電源 5W✕24h≒100Wh (少電流で流し続けるほうがよいようです)
等が考えられますが、これで、1日200Wh程度になりそうです。
実際には、様子を見ながら使い方を調整します。
システム構成と基本仕様
発電システム全体の構成は、接続方法は下の図のようになります。
「蓄電システム.com」 より引用
上の図のように、太陽光パネルはチャージコントローラーを介してバッテリーにつなぎます。
電力の大きいDC-ACインバーターはバッテリーにつなぎます。チャージコントローラーの負荷端子につなぐこともできますが、チャージコントローラーから大電力を取り出すと、機器にダメージを与えるおそれあがありますので止めるべきなのだそうです。
バッテリーの寿命を伸ばすためには、常に少し負荷電流を流す使い方のほうがよいようです。そのために、自己消費電力の少ない小電力のDC-ACインバーターやDC-DCコンバーターを用意するのがよいでしょう。ただし、それらの機器では最低の遮断電圧(バッテリー電圧が下がった時に動作を止める)がはっきりしなかったり、信用おけないこともあるため、チャージコントローラにつなぐほうが安心です。チャージコントローラーの保護回路に頼ることができます。
以上のことがらを考慮し、基本仕様と必要性能は以下のようにしました。
・ソーラーパネルは100W級とする。
ソーラーパネルはベランダに置くことになりますが、共有スペースに据え付けることは禁じられていますので、キャスター付きの台にパネルを載せ、台をベランダの手すりに縛り付ける形にします。発生する電力は、天気のよい日で70W✕5h≒350W程度かと思われます。
・バッテリーは1000W級とする。
停電時に1日に数百Wh程度が必要として、余裕をみて、1000Wh程度のバッテリーを使うことにします。深放電に強いというディープサイクルバッテリーとすることにしました。なお、バッテリーの寿命を縮めることなく使える電力は、鉛バッテリーの容量の半分程度と考えた方が無難なようです。
・チャージコントローラはMPPTとする。
我が家の日照条件があまり良くないことを考慮して、効率の良いMPPTを選びました。とはいえ、大電力のソーラーシステムでもないかぎり、あまりMPPTに拘る必要もなさそうです。
・DC-ACインバーターは、300W級とする。
しかし、この程度の電力のインバータは、自己消費電力が大きそうなので、平常時は使わず、停電時用とします。平常時は、小電力のDC-ACインバーターとDC-DCコンバーターでまかなうことにします。
機器の選択と購入品
必要な各機器の詳細については、このブログの太陽光発電の別記事として書きましたので、そちらを参照してください。
ソーラーパネルとチャージコントローラ
ソーラーパネルとチャージコントローラーがセットになっている「カウスメディア 100W 単結晶 ソーラー発電蓄電ケーブルセット MPPT JANコード/ISBNコード:4573339821715 価格 24,483円 」をヤフーから購入しました。
下の写真は、100Wソーラーパネルです。規格は、
最大出力 100W
最大出力動作電圧 17.8V
最大出力動作電流 5.62A
開放電圧 21.3A
短絡電流 6.07A
となっています。
カウスメディアのヤフーショップより引用
下の写真は、MPPTチャージコントローラーTracer1210で、規格は
システム電圧:12V / 24V/
定格バッテリ電流:10A/
バッテリ電圧範囲:8~32V/
最大入力電圧:100V/
定格入力電力:12V 130W 24V 260W/
となっています。
カウスメディアのヤフーショップより引用
バッテリー
スーパーナット S31MF バッテリーストア.com 【12V100Ah】 ¥10,980を楽天で購入しました。
規格は以下のようになっています。
・互換: M31MF SMF31MS-730 DC31MF など ディープサイクルバッテリー
・対応情報:マリンエンジン始動用 バスフィッシング用エレキ キャンピングカー 二次電源 他
・外形寸法(mm)長さ:303、奥行:172、高さ:217 総高:238
・端子:ツインターミナル (インチねじ 規格5/16(外径約7.9mm)、山数18)
・電圧(V):12
・20HR容量(Ah):100
「バッテリーストア.comの楽天ショップ」 から引用
DC-ACインバーター
BESTEKの正弦波インバーター「300W DC12V 車載充電器 USBポート ACコンセント MRZ3010HU ¥5,680」を楽天で購入しました。
規格は、
定格出力:300W
最大出力:380W
瞬間最大出力:600W
出力波形:正弦波
出力周波数:55Hz
USB出力:DC 5V/4.2A (5.0Amax)
内蔵ヒューズ:25A×2
外形寸法:16cm×9.8cm×5.7cm
本体重量:約620g
となっています。
「BESTEKの楽天ショップ」から引用
DC-DCコンバーター
Outtag カーチャージャー 車載充電器 (90W 15~20Vノートパソコン 変換プラグ16種類付 5V 2.1A USB充電器搭載)をアマゾンで購入しました。
規格は、
入力:DC10-15V
出力:15-20V 90W(最大)
USB出力:5V 2.1A
サイズ:63.5*48.9*16.9mm
となっています。
出力として、ノートPCのAC電源アダプターのプラグと互換性のある、DCプラグが付属しています。付属プラグは全16種類があり、東芝dynabook 19V、hp 19.5V、dell 19.5V、lenovo 20V、sony 19.5V、VersaPro acer 富士通 19V、Samsung 19V などに対応しています。
プラグに応じて電圧が自動的に変わるようです。
「アマゾンのOuttagカーチャージャー」から引用
組み立て
ソーラーパネルの作成と設置
先ず、ソーラーパネルを作り、ベランダに置き、ロープでベランダの手すりにくくりつけるようにしました。下の写真のようになっています。
イレクターパイプでキャスター付きの台を作り、その上に載せてあります。我が家のベランダは南東を向いており、昼過ぎには陰るため、太陽の平均高度は通常の条件での1日の平均よりも低くなるはずですので、少し効率を上げるため、傾斜は季節で変えられるようにしてあります(おまじない程度かとは思いますが)。今は、秋分を過ぎていますので少し傾斜を大きめにしてあります。ケーブルはエアコン用の配管穴を使って室内につないでいます。
配線
チャージコントローラーの説明によると、先ず、チャージコントローラーにバッテリーを接続し、次に、ソーラーパネルを接続します。外すときは逆の順序で行うとあります。
その理由は、先ずバッテリーをつなぐことにより、チャージコントローラーに電力が供給され、各種保護回路が動作するようになるためだと思われます。
大きな電力のDC-ACインバーターはバッテリーに接続します。
小電力のDC-ACインバーターとDC-DCコンバーターは、チャージコントローラーの負荷端子、あるいはバッテリー直結のいずれの接続でもよさそうです。低電圧時の遮断特性が不十分だったり不明だったりという場合は、用心のためにチャージコントローラーの負荷端子につなぐのがよいでしょう。私は、DC-ACインバーターには亀の水槽のフィルターのモーターをつなぎ、DC-DCコンバーターにはノートPCをつなぎました。
ケーブル類が揃っていれば、組み立て配線はとても簡単です。ただし、ケーブル類が揃っていないときは、ケーブルの末端処理、あるいは、12V系の配線のためのシガーソケット・プラグ類の準備に手間がかかります。
なお、チャージコントローラーとバッテリーの間の配線はできるだけ太く、短くすることが大事です。充電の際は数Aという電流が流れますので、コードでの電圧降下が無視できなくなるためです。
ソーラーパネルとチャージコントローラーの間でも電圧降下は生じますが、この場合は電力を若干損するだけですみます。しかし、チャージコントローラーとバッテリーの間に電圧降下が生じると、充電制御の電圧に狂いが生じ、バッテリーの充電が進まなくなったりするためです。
動作状況
ソーラーパネルの発電量 天候と発電・充電状況の関係
チャージコントローラーはバッテリーの状況に応じて充電電圧、充電電流をコントロールしています。最大電力で充電するのはバルク充電のときだけです。バルク充電で充電が進み、バッテリーの電圧がある値に達すると、そこから電圧を一定にし電流を制御しながら(電流を抑えながら)充電を行うアブソープ充電(ブースト充電)になります。充電に関する詳細については、末尾のリストにある別記事「チャージコントローラーの規格と使い方」を参照にしてください。
なお、チャージコントローラーの表示をみていると、充電状況がある程度わかります(あくまでも、ある程度です)。
晴天での発電では70W程度で、なかなか100Wにはならないようです。薄い雲を通して1A程度(20W程度)以上、厚い雲でも0.数A前後は充電しているようです。
負荷の状況
負荷としては、ノートPCと、水槽のフィルターのモータをつないでいます。フィルターは24時間稼働中です。下の記述でのA(アンペア)は約12Vでの電流です。
・ 300W DC-ACインバーター
電源スイッチOFFでもわずかに電流が流れているようです。OFFでも、USB端子にスマホ充電器を挿入すると充電開始します。
無負荷でONの状態では0.8A程度流れていますので、10W程度自己電力消費しているようです。実際無負荷でも温度が少し上がり時々ファンが回ったりしています。ファンの音は意外と大きく感じます。キャンプ場などで使うと騒音がうるさい、という声があるようですが、分からないでもありません。
自己消費電力の問題があるので、平常時は使わず、停電時に用いることにしました。
なお、このインバーターにスマホ、iPadをつなぎ、充電は問題なく行えます。また、充電中でも支障なく動作します。
その他照明器具などあまり大電力を使わない機器を試してみましたが、問題なく動作します。
・手元にあった小電力DC-ACインバーター
このインバーターの性能は不明ですが、問題なさそうなので常時使うことにしました。なお、低電圧の遮断電圧は12.0V程度のようですので、どこにつないでも安心して使えます。
インバーターのスイッチをONにするとファンが回り始めます。無負荷状態で0.1A程度で、亀の水槽のモーターをつなぐと0.4A程度になりました。
・ DC-DCコンバーター
Outtag のコンバーターでは、接続プラグが多数用意されており、PCに適合したプラグをさすと機種が判別され電圧が自動的に設定されるようです。
チャージコントローラの負荷端子に接続すると、ランプは点灯しますが、無負荷で0.0Aと表示されますので、自己消費電力は少なさそうです。
USB接続で、スマホ、iPadの充電は問題なく行われ、充電中の動作も問題ありません。
付属プラグでノートPCを接続すると、シャットダウンとスリープ状態では、電流は0.1Aでした。ノートPCがON状態で、CPUが数%以下のとき、アプリを動かしていないときには0.5A、動画再生のときは0.7A程度を示しています。効率が良いせいでしょうか、消費電力は意外と少なさそうです。とはいえ、このコンバーターでも使っているとほんのりと暖かくなり、40度程度にはなっていそうなので、コンバーターの周りは覆わないほうが良さそうです。
このコンバーターは上で書いたように効率がよいことに加え、ノートPCの正規のAC電源アダプターよりも大幅に軽くて小さいため、ノートPCを車に積んで使う場合にも大変重宝しそうです。
まとめ
先ず、気になるのはバッテリーの時々刻々の充電状態ですが、これはよくわからない、というのが正直なところです。バッテリーの電圧と、その時の状態(充電中か放電中か)に応じて、おおよその推定ができるだけです。詳細は、下のリストにある別記事「バッテリーの規格と使い方」を参照してください。
又、ただ組み上げただけでは、ソーラーパネルでの発電量のかなりの部分を無駄にしているかもしれません。当初からある程度覚悟していたことではありますがどうやらそのとおりのようです。使いながらいろいろ試してみることが大事です。
特にチャージコントローラーは、上述のように、できるだけ効率よく充電すると同時に、バッテリーの特性劣化を抑えるための充電制御を行っています。詳細は下のリストの「チャージコントローラーの規格と使い方」の記事を参照にして下さい。
使ってみると、充電が思ったほど効率よく進まないように感じます。その理由は、上に書いたように常に最大電力で充電しているわけではないこと、充電と放電のタイミングのマッチングが必ずしも良くないこと、配線ケーブルの電圧降下でチャージコントローラーの電圧設定が狂うということ、等々いろいろな理由がありそうです。
この記事の上の方では、水槽用のモーターに常時電源を供給している、と書きましたが、雨天が続くと放電が進むため、現在は水槽用のモーターの電源は商用電源から取っています。
それはそれとして、停電になってもあまり心配しなくてもよくなった、という安心感は非常に大きなものがあります。
また、自作ソーラーシステムの構築は知的好奇心をかなり満たしてくれます。それを知ってもらいたくて、このブログを書いているといえます。
このブログの太陽光発電の記事は以下のとおりです。