「新アジア仏教史03 インドⅢ 仏典からみた仏教世界」奈良康明他編(佼成出版社 電子書籍版 2018)

この巻は、経・律・論の三蔵からなる仏典に焦点をあてたもの、ということです。仏典の量は極めて多く、八万四千あるのだそうです。この巻の目次は下のようになっています。

第1章 仏伝からみえる世界
第2章 初期経典と実践
第3章 律と仏教社会
第4章 大乗経典の世界
第5章 解釈学の進展
第6章 思想の深化
第7章 儀礼、象徴、テキスト

第1章では、ブッダについて伝わるお話しがテーマです。しかし、仏教説話に溢れるため、歴史的人物としてのブッダを理解するのはなかなか難しいことのようです。

第2章では、初期の経典について、第3章では、律つまり生活のルールについて書かれています。

第4章では、大乗経典に至る流れが書かれています。一節ではブッダがどのように教えたか、が書かれています。

初転法輪、このとき、ブッダは法(真理の教え ダルマ)を説き始め、複数の弟子がブッダの教えを理解し悟ることになります。これは、複数の仏(悟った人)を認め、仏教を「仏になる教え」と理解する大乗仏教の基本になった、と説明されています。ブッダ入滅の後、2つの方向が生じました。
 ブッダの法(ダルマ)を分析し真理の体系をまとめようとした →部派仏教
 仏が現存することを願い、複数の仏の容認と智慧の探求を模索した →大乗仏教
更に、時が経つと経巻崇拝の傾向が強まり、般若経、法華経では、経巻そのものが大きな功徳・利益(りやく)を持つと理解されるようになりました。

そして、諸経典が展開されます。それらは、般若経典群、華厳経典群、浄土経典群、三昧経典、法華経と多岐にわたります。

第5章では、仏説観の展開、ブッダ観の変遷が書かれています。

第6章では、大乗仏教の根本ともいえる、「空」が主題になります。そこでは、ブッダの言葉として伝わる「空」の教え、そして装いを変えて、大乗教として伝わる「般若経」における「空」の教えが説明されています。

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