「生物から見た世界」ユクスキュル、クリサート(岩波新書 2005)
私は、2017年の電子書籍版を見ています。最初、この本に関する予備知識がないまま、本文を読み始めてみました。話は興味深いのですが、用語が不自然で、図の意味が理解できない、それよりなにより、非常に古風な発想の表現がある、などと違和感を強く感じましたので、この本の背景を知るため「あとがき」などを読んでみましたた。そうすると、なんと、著者のユクスキュルは1864年生まれでした。そして、この本が書かれたのは1933年頃のようです。今なら差別的な表現とされるようなことがあちこちに出てくるのはごく自然だということが分かりました。
著者のことが分かったところで、読み直してみました。一言で言うとおもしろい本です。そして、非常に重要な古典でした。しかし、著者の研究活動中は、彼の研究は科学的ではない、と評価され、随分と長い間フリーの科学者で過ごし、教職を与えられたのは1926年、62歳のときだったのだそうです。その後、脚光を浴びたようではあります。共著者のクリサートは作図の担当者です。
生き物は、客観的な「環境」に住んでいるのではなく、その生き物それぞれが作り上げた世界に住んでおり、それを「環世界」と名付けています。生物からは世界がどう見えているのか、どのように反応し行動しているのか、とても面白い本です。どうやら、我々人間には想像のつかない奇想天外な世界に暮らしているようです。
岩波書店の書籍案内には次のように書かれています。
甲虫の羽音とチョウの舞う,花咲く野原へ出かけよう.生物たちが独自の知覚と行動でつくりだす〈環世界〉の多様さ.この本は動物の感覚から知覚へ,行動への作用を探り,生き物の世界像を知る旅にいざなう.行動は刺激への物理反応ではなく,環世界あってのものだと唱えた最初の人ユクスキュルの,今なお新鮮な科学の古典.
この本の目次は以下のようになっています。
まえがき
序章 環境と環世界
一章 環世界の諸空間
二章 最遠平面
三章 知覚時間
四章 単純な環世界
五章 知覚標識としての形と運動
六章 目的と設計(プラン)
七章 知覚像と作用像
八章 なじみの道
九章 家(ハイム)と故郷(ハイマート)
一〇章 仲間
一一章 探索像と探索トーン
一二章 魔術的環世界
一三章 同じ主体が異なる環世界で客体となる場合
一四章 結び
訳者あとがき(日高敏隆)
