「確率論と私」伊藤清(岩波現代文庫 2010)
この本は、2010年の発行で、私は、電子書籍版を読んでいます。伊藤清氏は、1915年生まれで(2008年に亡くなった)、確率論などで重要な業績を残した数学者です。
半世紀ほど前、私は音声の子音の性質を記述するのに確率過程を使えないかと思い、アタナシアス・パポリスの「工学のための応用確率論」で勉強したことを思い出しますが、技術屋の私としては、伊藤氏の著書には敷居が高くてついぞお近づきにはなれませんでした。しかし、伊藤氏は数学と他分野の連携に随分と注力した方のようです。
この本は伊藤氏のエッセイ集で.どのようにして数学者になったのか、若い頃の確率論を純粋数学として確立させるための努力,そして、伊藤公式で名高い「確率解析」誕生の秘話、などが書かれています。
Ⅱ章の「色即是空、空即是色」のお話しでは、色と空の解釈には興味を惹かれました。氏は、色を「具体」、空を「抽象」に対応させて、考えを述べており、なるほどの思いました。Ⅲ章の「数学者と物理」数学と物理の歴史が面白く、その中で、数学と自然科学の連携が如何に重要であるかを述べています。
この本の目次は以下のようになっています。
Ⅰ 忘れられない言葉
忘れられない言葉/数学の研究を始めた頃/直観と論理のバランス
Ⅱ 数学の二つの柱
科学と数学/数学の二つの柱/かわった学生/色即是空,空即是色
Ⅲ 数学の楽しみ
数学者と物理/オイラーの応用数学/数学の楽しみ/数学の科学的側面と芸術的側面
Ⅳ 確率論とは何だろうか
確率論の歴史/組合せ確率論から測度論的確率論へ/コルモゴロフの数学観と業績
Ⅴ 確率論と歩いた六十年
確率論と歩いた六十年/確率解析の研究を振り返って
Ⅵ 思い出
秋月先生の思い出/近藤鉦太郎先生と数学/十時君の思い出/河田敬義君の思い出
初出一覧
あとがきにかえて
略年譜
〈付録〉確率微分方程式――生い立ちと展開
