「数学者の思案」河東泰之(岩波科学ライブラリー 2024)

この本には、数学者は、どのように育つのか、どのように考えているのか、研究生活はどうなっているか、などを著者の経験に基づき書かれています。例えば、若い学生を見て数学者に向いているか判断することがいかに難しいか、ということを述べています。早熟の天才がいたとしても、その人がその道で成功するかどうかわ分からない、というようなことですが、ここでは、私が要約するよりも、著者の文章をいくつか並べて紹介することにします。

私は、数学者を志望する高校生、大学生を集めた中で、誰が将来数学者として活躍できるかを高い精度で判定する方法はないと思っている。ただし良い方法がない中で相対的には、数学の筆記試験は一番ましな方法であって、これより優れた方法はないとも思う。
数学者として活躍するためには新しいことを生み出す創造力と、論理や計算などに代表される数学力の両方が必要である、この両者の能力の間にはあまり相関がない、実績を挙げる前に前者の創造力を測定するのはかなり困難である、後者の学力は比較的簡単に筆記試験で測れる、といったところなのではないだろうか。日本最高の天才、秀才と言われたのにほぼゼロに近い業績で消えていった人をたくさん見てきたことを思えば、この両者の能力の相関が高くないことは間違いないであろう。(ただし負の相関があったりはしないと思う。
人間の能力の多様な可能性を見失わずに人を育てることが重要だと思う。
「頭の良さと研究」にも書いた通り、高校生や大学生を見て、その中で誰が数学者として将来活躍できるようになるかを高い精度で当てる方法はないのである。

この本の目次は次のようになっています。

まえがき
数学者のなり方
 1 頭の良さと研究
 2 飛び級
 3 日米大学の授業
 4 アメリカ大学院留学
 5 数学研究と英語
 6 数学研究とフランス語
 7 数学者のなり方
 8 研究と年齢
大学の中で
 9 試験の採点
 10 難しい試験・難しい授業
 11 入学試験
 12 専攻長・学科長
 13 日本の大学の国際化
 14 大学院重点化前の数学科大学院
 15 数学研究への公的支援
数学のコミュニティと研究
 16 フィールズ賞と国際数学者会議
 17 コロナ以後の海外出張
 18 ルーマニアの数学
 19 ジャーナルの編集委員
 20 プレプリントサーバー
 21 数学と物理学
 22 数学とコンピュータ科学
 23 数学者の時間感覚

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