「中国嫌いのための中国史」安田峰俊 (PHP新書 2024)
中高年齢層では三国志等の中国の歴史に親しみを持っている人が多いかと思います。また、若い人たちの間では『キングダム』や『パリピ孔明』をはじめ、中国史が題材のエンタメも大人気なのだそうです。ところが、現代の日本では中国嫌いが相当な数いそうな雰囲気です。
最初この本のタイトルを見た時、中国嫌いの人でも中国が好きになる、というのか、中国嫌いの人は溜飲を下げる、というのか、一体どちらだろうと思い読み始めました。この本を読んでみたところ、どうやら、中国の好き・嫌いが反転することも強化されることもなさそうだ、ということが分かりました。タイトルは「中国史」となっていますが、民族主義的なバイアス等を感じることの少ない現代中国論という感じの本です。
この本を読むと、中国人たちは歴史の引用が好きで、体の中に歴史が染み込んているようです。中国共産党や政治家も古典を引き合いに出し政策を決定・説明しているらしいことが分かります。中国ぎらいの時代だからこそ、中国史を知り、それを武器にすべき、というのが著者の主張です。早い話が、この本を読むことだけに限っても、例えば第一章は水滸伝や三国志に知識があると、話が通じやすいかと思います。やはり、中国の古典に関する知識もある程度持っていることが必要、ということは確かそうです。
この本の目次は以下のようになっています。
目次
第1章 奇書
諸葛孔明(三国志演義)(一八一~二三四年)千八百年ぶりに「諸葛丞相」誕生か
水滸伝 若者も読むべき「役に立つ」古
第2章 戦争
孫子 (前五〇〇年頃)二十一世紀にも通用する兵法書
元寇 (一二七四年・一二八一年)「他人事」として忘れられた軍事行動
アヘン戦争 (一八四〇=一八四二年)「大きな赤ん坊」を生んだ近代中国のトラウマ
第3章 王朝
唐 (六一八~九〇七年)最高の名君の帝国に隠された「不都合な真実」
明 (一三六八~一六四四年)現代中国とも相通じる「地味」な王朝
第4章 学問
孔子 (前五五二?~前四七九年)儒教という国家統治イデオロギーの復活
科挙 熾烈な競争と試験地獄の伝統
漢詩と李白 実はバリバリ現役の「役に立つ学問」
第5章 帝王
始皇帝 (前二五九~前二一〇年)二千二百年越しに目指す「大一統」
毛沢東 (一八九三~一九七六年)Z世代すら惹きつける魔人
