手作り楽器 1本のストローで作る楽器
ストローを使い音を出す
ストローを使い、いろいろな手作り楽器を作ることができます。ここでは、一本のストローを使った楽器を幾つか試してみます。
ストロー尺八
ストローにはできるだけ細工せずに音を出そうとすると、先ず考えられるのは、ストローを適当な長さに切ってみることです。その場合、音の出し方は、尺八や横笛と同じく、唇を平たくして空気の平たい流れを作りストローの端にぶつけ音を出すことになります。
この楽器?を何と呼ぶべきでしょう。リードなしのストロー縦笛、とか、ストロー尺八となるのでしょうか。
ところで、ストローの先(吹き口の反対側)を開いたままにしておくと開管、先を閉じると閉管となります。閉管ですと、すぐ音を出せるようになります。例えば、簡単に手に入る6mm径のストローを使うと、4cm~十数cmの長さで比較的安定した音がでます。しかし、開管の場合には、この程度の細さになると音を出すのがかなり困難です。実は、未だ安定な音程がだせていません。従って、私の場合、楽器にするには閉管にせざるをえません。
一般に、音の高さは、ほぼ管の長さで決まりますので、音程をコントロールするには管の長さをなんとか変えなければなりません。ストローでは途中に穴を空けるのも難しいし、小さな穴を開けてよい音にできるかどうかもわかりません。
そこで、「たれびんストロー尺八」を作ってみました。下の写真です。たれびんに水をいれて、水が漏れないように隙間を詰めストローをそこに差込みます。出来上がりはこの写真です。とても簡単に作れますが、ちゃんと演奏できます。タレビンを指で押して水面を変化させ音程をコントロールします。水に浸けたことにより、閉管になります。指の押し方の加減だけでメロディにするにはかなり熟練を要しますが、なんとかなります。6mm径のストローを大体15cmの長さにして使いました。実際に水面の上になるのは、最初に書いた長さ程度ですので、1オクターブ半程度の音域です。
ストローリード
上に書いた「ストロー尺八」は、音を出すのに練習が必要です。もっと簡単に音を出す方法はないでしょうか。
音を出しやすく簡単に作れる笛が「米村傳次郎のおもしろ科学館」オーム社に、ストローリードとして載っています。この方法は、ストローを上から数センチのところに切れ目を入れ、折ります。上側ストローの折れ目の部分を平たくしておきます。そうすると、鳴りやすい開管の笛ができます。これは、教えて「まこペンギン」というページに紹介されています。でんじろうさん監修、となっています。このページには、水笛の作り方が書いてありますが、そのストロー部分が今回のストローリードに当たります。
なお、でんじろうさんは、ストローの折ったところを平たくするためにホチキスを使っています。大変良いアイデアですが、小学生の工作としては難しそうなので、ゼムクリップを使ってみました。これでもいけそうです。但し、ホチキスの方が確実で安定しています。と書きましたが、実は慣れてくるとホチキスもクリップも必要ありません。吹くときに指でちょっとつぶして吹けば大丈夫です。
ストローの下側(吹き口の反対側)を閉じると閉管になります。閉管のほうが音は出やすいのですが、この方法は、開管でも音が簡単に出せます。閉管と開管を比較すると、開管にすると、吹き口の角度の範囲が少し減ります。つまり、音を出しづらいのは確かです。しかし、角度さえあわせればうまく鳴る、という優れものです。
ストローの下部を開いたまま、コップの水に漬けると、水面が閉端となり、音の高さも調節できるようになります。しかし、吹いた空気の圧力で水面が変化し、このままでは楽器としては使えません。でんじろうさんの本には、これは楽しい音がでるよ、と書いてあります。実際、ピヨピヨと鳴ります。楽器にするには一工夫が必要です。
昨日の「ストロー尺八」の代わりにこのストローリードをたれびんに挿して試してみました。音が簡単に出るのがいいところです。水面の変化はストロー尺八の場合よりも少ないようです。
上の写真がそれです。ホチキスを使わずにクリップで空気の出口を広げています。そのため、工作が簡単で、誰でもすぐ音を出せます。メロディも、少しばかり練習するとできるようになります。なお、ストローの長さ、径などは「ストロー尺八」で書いたのとほぼ同じです。
ところで、このストローリードは、厳密には、リードで音を出しているわけではありませんので、「ストローリード」はミスリードです。エアリードだからそれでいいのだって?
ストロートロンボーン
横浜のおもしろ科学たんけん工房の川島さんに、ストローで作るトロンボーンを教えてもらいました。下の写真です。
太目のストローとそれよりほんのわずか細いストローとを用意します。細い方のストローで開管のストローリードを作っておきます。ストローリードについては、 手作り楽器 <ストローリード>を見てください。太いストローの片端を閉じ、水を溜め、そこにストローリードを差し込みます。ストローの片方の端を閉じるには、金属製の目だまクリップでストローの端を数ミリだけ出して挟み、はみ出した部分をライターの熱で溶かします。出来上がりは写真のとおりです。
ストローリードを出し入れすることにより音程を変えることができます。安定な音域は1オクターブ+α、といったところです。なお、閉管のため、2倍音にはなりません。また、倍音への移行をうまく制御するのはかなり難しく、私は未だうまくできません。
ストローの太さについては、太いほど(6mm径)低音が出やすく、細いほど(4mm径)高音が出やすいようです。なお、細いほど倍音に移りづらいため、高音で安定だといえます。ただし、いうまでもありませんが、音の高さは、太さではなくほぼ長さで決まります。
このストロートロンボーンは、水面が揺れやすいためかと思われますが、ビブラートをかけやすく、古い叙情的な曲を演奏するのに向いています。また、別掲のタレビンを使った場合よりも安定にふけます。
ところで、一般にトロンボーンを実現するにはスライドの隙間の解決に苦労します。試しに、ストロー等を組み合わせてスライドにより管の長さを変えてみましたが、僅かの隙間があってもに音がかすれる、あるいは音が出づらくなります。かといって隙間を減らそうとするとスライドの摩擦が増して動かしづらくなるジレンマがあります。このストロートロンボーンは水を使うことにより、スライドの隙間の問題を解消しています。
以上のような理由で、このトロンボーンは、極めて簡単な作りでありながら、とても演奏しやすい優れものです。
なお、このストロートロンボーンで音を出すと、吹いた空気の圧力で水面が少し変化します。しかし、ストロートロンボーンでは水面の上がり方が少ないため、音程のコントロールにそれほど困難はありません。コップに水を入れ、そこにストローリードを漬けて鳴らすとストロー内の水面の変化のためにピヨピヨと鳴る水笛になることがでんじろうさんの本(「米村傳次郎のおもしろ科学館」オーム社)に書かれています。しかし、このストロートロンボーンではストロー内の水面の変化が少なく音程の変化も少ないためこのような遊びには向きません。二つのストローの間が狭いため、水の粘性も作用して、水面があまり変化できないのかもしれません。
但し、音が高くなると、水面が振動しやすくなります。この原因は、水が共振しているとは考えずらいので、倍音が出ないように息を強くしているせいかと思います。いずれにしても、この振動は閉端がふらふらと動くことを意味しますから、音程が不安定になっているはずではありますが、ビブラートのような効果もあり、それはそれで味のある音です。
なお、この記事は、2007年の記事を編集しまとめてものです。