「槍・穂高・上高地 地学ノート」竹下光士、原山智(山と渓谷社 2023)

カメラマンの竹下氏が地質学者の原山氏のアドバイスを受けながら書いた本のようです。北アルプス南部がどのような地層からなり、どのように作られたかが書いてあります。この本には非常に沢山の美しい写真がありますが、著者の竹下氏が撮ったものだそうです。

タイトルにあるように、槍、穂高、上高地を中心に書いてあります。私自身は山歩きをしないため、各山の名称と位置が分からないため、地質マップをコピーし、それを参照しながら読みました。

本の特徴

この本の目次は末尾に記しますが、この本では、まず最初に、槍・穂高連峰の1億5000万年に渡る生い立ちのドラマティックな説明があります。4つほどの部分に別れ異なる生まれ方をしていることがわかります。

その後、上高地の梓川を歩きながら、河原の足元の小石の特徴が場所によって変わっていく説明があります。それから、穂高を作る岩石の解説があり、かつてあった槍・穂高カルデラの話題に移ります。その後も、実際に歩きながら、美しい写真を使い、地形を見て、岩石を見て、この山々がどのように作られたか、謎解きが行われますのでワクワク気分が続きます。

この本は面白い。この一言です。私は、20代の後半に膝を痛めてしまい、日帰りのハイキング程度なら大丈夫なのですが、宿泊を伴う山歩きはできなくなりました。元気ならこの本を片手に北アルプスを歩いてみたい、と心からそう思いました。

なお、この本の随所に地学の基礎的な説明はありますので、地学の知識が不十分でもなんとかなるかとは思いますが、できれば、あらかじめ、プレートテクトニクス理論や、火成岩、深成岩など岩石の基本的な知識を持っていると格段に分かりやすくなると思います。

本の構成

目次は以下のようになっています。

[01]山を地質で眺めるということ
[02]地質図を片手に上高地散策
[03]穂高を作る岩石 溶結凝灰岩を知る
[04]在りし日の槍・穂高カルデラを想う
[05]南岳の礫岩に大地の輪廻を見る
[06]穂高に大岩壁ができた理由
[07]なぜ常念岳は三角形に尖っているのか
[08]流浪の岩石 槍ヶ岳結晶片岩
[09]世界一若い花崗岩、現わる! 滝谷花崗閃緑岩
[10]槍・穂高を押し上げた巨大な力
[11]雪渓と氷河、どこが違う? 氷河の基本
[12]氷河地形のビフォーアフター
[13]槍ヶ岳になれなかった中岳
[14]氷河公園の歩き方
[15]穂高を削った氷河はどこまで流れていたか?
[16]槍沢の氷河地形探訪
[17]実践! 前穂を削った氷河を想像する
[18]屏風岩の大岩壁が生まれた理由
[19]雲仙普賢岳と焼岳を重ねて見る
[20]岩塔を作った天才彫刻家の正体
[21]風と寒気が作る地形 周氷河地形
[22]上高地誕生の物語を想う
槍・穂高の地史

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