後期高齢者、気象予報士試験に挑む 3. アンサンブル予報で引っ掛かる

気象予報士受験の準備を始めてから3ヶ月余りになります。前の記事「後期高齢者、気象予報士試験に挑む 1. とにかく始めてみる」に書きましたように、テキストに書いてあることがなかなか覚えられません。そのため、テキストを読む際は常に、どうして?ほんと?と常に問いながら進むようにしています。そうすると、えっ?分からん!と引っ掛かるところが度々現れます。そういう場合、大抵は私の読み間違いや知識不足だったりして後で解決するのですが、たまに、その引っ掛かりが解決しないことがあります。今回は、そんなことの一つを書きます。

アンサンブル予報

天気予報の手法として、アンサンブル予報、というのがあります。テレビの台風の進路予想などで、今後の台風の進路が何本もの線に表されており、その中から最も有り得そうなコースを台風の進路予想としている説明をみたことがあると思います。台風に限らず、このように、初期条件などを少しずつ変えながらスーパーコンピューターを使い数値計算によりこれからの気象の予想(候補)を複数用意し、それら候補から統計的に最も確かそうな一つの予報を作るのがアンサンブル予報です。

私が使っているテキスト「らくらく突破 気象予報士 かんたん合格テキスト 専門知識」の中に、アンサンブル予報のメリットとして、「アンサンブル予報は、結果を統計的に解釈することで単独予報より予報誤差を縮小することができます」と書いてあるのですが、ここに引っかかってしまいました。もっとも確かだと判断して設定した初期条件(初期値)を使って解いた予報(単独予報)よりも、少しずらした初期値を用いて出した予想を組み合わせた場合のほうが良くなるとは、一体どういうことだろうか。誤差が増えるのではなかろうか。何か数学的根拠があるのだろうか、という素朴な疑問です。

なお、私のこのテキストには、その他のメリットとして、アンサンブル予報で得られた候補のばらつき具合から、予報の確実さが分かる、台風等の場合の防災対策の内容を立てやすくなる、と書かれています。これらのメリットは実際に台風が近づいている場合をイメージすると、かなり大事な情報であることは、直感的に分かります。

そこで、気象庁のホームページの資料を見てみました。「令和2年度数値予報解説資料」には、アンサンブル予報が単独予報よりも予測誤差が小さくなる記述はありませんでした。予測の不確実性が推定できる、複数のシナリオが考慮できる、というメリットは書いてありました。これらは、私の使っているテキストのその他のメリットと同じ趣旨です。

もう一つ、気象庁の資料「第10世代数値解析システムと・・・」という資料も見てみました。こちらでも、アンサンブル予報は、確率的に把握でき、予測情報の確からしさが得られる、とありましたが、アンサンブル予報が単独予報よりも予測誤差が小さくなる、という直接的な記述はありませんでした。逆に、この資料の「アンサンブル平均」の説明を読むと、「全アンサンブルメンバーの平均。アンサンブルメンバーのばらつき具合が正規分布に近い場合、最も予測精度が良い予報となり、場合によっては決定論的予報よりも精度が高い」とあり、上手に使うと決定論的予報(単独予報)よりもよいことがある(大抵はよくない?)、と読めます。

結論としては、気象庁の担当者は、アンサンブル予報の方が予測誤差は小さくなると無条件で考えている訳ではなさそうです。とはいえ、アンサンブル予報には、確率的な予想ができるという大きなメリットがありますし、また、経験的に単独予報よりも当たる、という体験あるいは感触をお持ちの方が多いのかもしれません。私のテキストの著者もその経験・感覚に基づいて書いたのかもしれませんあるいは、気象庁がアンサンブル予報を導入した初期の頃、そのメリットとして(筆が滑って)ちょこっと盛った時期があるのかもしれませんね(この辺りは私の想像ですので、信じませんように)。

それにしても、こんなことにこだわっていては時間がもったいない。合格がますます遠のく。うぅ。。。

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