「どうして時間は『流れる』のか」(PHP新書) 二間瀬敏文著 (2012)
表題の本を読んで見ましたので、その感想というか、生じた疑問について書きます。疑問が生じたのは、宇宙の最期の部分です。重力も考慮した場合の宇宙の最期はどうなるのか、、、、
この本の紹介
著者の二間瀬敏文氏は、物理学者であり、この本は主として物理的な視点で書かれています。
タイトルが表すのは、「時間」が流れるのは何故なのか、と読めますが、それらしいことを書いてあるのは、第2章 時間はなぜ流れるのか、の部分かと思われます。ただし、何故流れるかではなくて、どの様なときに時間の流れ(方向)が現れるか、ということを書いているようです。「どうして」ということは現在物理的に解明できることではなさそうですので、本文がこのような書きぶりになっているのは当然かもしれません。表題を決めるときに、編集者と相談して無理につけた、ということかもしれませんので、あまり詮索することもないかと思います。
さて、内容ですが、目次をざっと書きます。第1章「時間とはなんだろう」では、生物学的、哲学的、物理的な時間について簡単に説明しています。第2章「時間はなぜ流れるのか」では、時間の矢(流れる方向)、熱力学、エントロピーについて説明しています。第3章「時間はどのように流れるか ~運動と時間の関係~」は、物理的な時間・空間に着いてのお話です。第4章「時間はどのように流れるか ~重力と時間の関係~」では、相対性理論、ブラックホール、宇宙の熱的平衡について説明しています。第5章「宇宙と時間の深い関わり」では、宇宙の歴史、初めと終わり、が話題です。第6章「時間研究の最前線」では、時間の反転、タイムマシン、話題の新理論について触れています。
この本の特徴については、著者が「はじめに」で以下のように書いています。
<世の中に時間をテーマにした本は多数ありますが、そうした本でもあまり触れられることのない「時間と重力、時間と宇宙の深い関係」の紹介が、この本の最大の特徴です。>
上に書いてあるとおり、この本では、エントロピーが増大することについて説明があり、また、特殊相対性理論と一般相対性理論についての説明で、重力について十分な知識を初心者に与えてくれます。そして、この種の入門書では珍しく、重力を考慮したエントロピーについて書いてあり、そこから導かれる重力熱力学における熱平衡状態のお話があります。熱平衡状態とは、要は、宇宙の終わりにどうなるのか、というお話です。
そこで、私は引っかかってしまいましたので、その部分だけかいつまんで説明することにします。
宇宙の終わり
先ず、ブラックホールについてですが、この本によると(どの本にも書いてありますが)
1.長い時間が経つとブラックホールは蒸発する
だそうです。ブラックホールはすべてを飲み込んでしまうはずなのですが、量子効果により、エネルギーを表面から放出するのだそうです。これによると、ブラックホールはいつかは消えて(最後は爆発?)しまうそうです。
さて、宇宙の時間が十分に経過して、宇宙の状態が熱平衡の状態に至ると、重力を考慮したときのエントロピー増大により、
2.重力熱力学によると、宇宙の最後は、ブラックホールで凸凹の宇宙になる
と書いてあります。なお、宇宙の膨張が続くことは大前提のように見えます。
1.ではブラックホールは消えるのに、2.ではブラックホールが残っています。
結局、ブラックホールは残ってんのかい、残ってないのかい、どっちなんだい、と叫びたい心境です。一体どういうことなのでしょうか。
ブラックホールは蒸発するというのが間違いか、あるいは、ブラックホールが小さくなるのは何か条件が必要なのかもしれません。別の可能性としては、エントロピー増大の法則は、宇宙規模では、あるいは宇宙時間の長さでは、成り立たないのかもしれません。ひょっとすると、宇宙の将来は、ブラックホールで凸凹な状態になり、それがまばらになり、そしてブラックホールが消えていく、ということでしょうか。この本を注意して読み直してみましたが、その辺りの説明は見つかりませんでした。
ということで、私には答えが結局わかりませんでした。更に勉強が必要そうです。またまた、宿題が増えました。