「シンギュラリティは近い(エッセンス版)」 レイ・カーツワイル(NHK出版 2016)
カーツワイルは様々な顔をもつようですが、ここでは、AI研究者で未来学者とするのが良さそうです。この本は、「ポスト・ヒューマン誕生」(2007年)のエッセンス版で、間もなくAIが人類の知性を上回り私たちは生物の限界を超えてついにシンギュラリティへと到達すると主張しています。
2022年のOpenAIによる対話型AIであるChatGPTの衝撃のあと、私も遅れ馳せながらこの本を読んでみました。未来予測ですので、後になってみるといろいろと難癖はつけることができますし、この記事を書いている現在迄にまたまた時間が経っていますので、ここでは、シンギュラリティという言葉についてのみコメントします。
シンギュラリティ
シンギュラリティとしては、いろいろと定義されています。以下にいくつか紹介し、それについて私の感想を書きます。
1.テクノロジーが急速に進歩し、それにより甚大な影響がもたらされ、人間の生活が後戻りできないほどに変容してしまうような、来たるべき未来
という定義がありますが、普通は人間の生活が後戻りすることはそれほど多くないと思いますので、「変容」の説明が少しずれている感じがします。
2.指数関数的な成長の中の、ほぼ垂直の線に近い段階
という定義があります。これは明らかに間違いに近いと思います。指数関数というのは常にある値の比で増える関数ですので、急に垂直になるような段階が無いことは確かです。
3.技術的「成長」が指数関数的に続く中で人工知能が「人間の知能を大幅に凌駕する」時点
という定義もあります。中心的な定義かと思われますが、ここでは、「人間の知能」の定義が非常に難しいため、それがどのような時点なのかよくわかりません。
ということで、シンギュラリティについての定義はなかなか難しそうです。
なお、特異点に到達した後は、私達は生物の限界を越えるなどという様々な記述がありますが、荒唐無稽なものも多く、コメントは諦めました。