「僕とアリスの夏物語 人工知能の、その先へ」谷口忠大(岩波科学ライブラリー 2022)
小説と解説を組み合わせた形式で書かれており、人工知能の入門書としては、とても良くできていると思います。学習漫画の漫画の部分が小説になった感じ、といえばよいのでしょうか。
小説でお話しの舞台が示され、解説で、人工知能とは、AIの学習、画像や音声の理解、分かるとはどういうことか、などの疑問を小説に対応させる形で説明が進みます。そのため、AI・知能に関するイメージが湧きやすく理解しやすいものと思われます。
第1話では、小説パートでは、ある日、登校拒否している小学6年生の男子の家に、知り合いの人が謎の少女を連れてやってくる、というところから始まります。その少女はAIで、最初は何もできない赤ちゃんのように振る舞います。知り合いの人に、一緒に暮らしていろいろと教えてやってほしい、と頼まれます。この男の子の家は、ふた親ともお勤めをしていおり、昼間は少女と二人になります。第2話以降、この少女は徐々に学習して身体を動かし知能が発達していくことになります。
ここで扱われる話題は、下の目次のとおりです。
この本の目次
第1話 訪れる者
第1話解説 人工知能の時代
「知能」って何だろう
人工知能技術は人間に近づいているのか?
「関数」としての人工知能
発達する心をつくる
第2話 物を調べる者
第2話解説 探索と物体概念の獲得
物体の概念とは何か?
「見て、触って、聞いて」知るロボット
「物体概念」の数理モデル
探索する幼児 vs 待っている人工知能
ロボットに好奇心をもたせる
「時々、ダメそうなことをやってみる」知的さ
第3話 言葉を覚える者
第3話解説 音素と語彙の獲得
言葉を聞きとるための知識
幼児は音素と単語を発見する
音列の統計情報をつかう
ロボットは単語を「発見」できるか?
幼児の音声認識にテキストはいらない
それは「クーラー」か、「スズシイ」か?
第4話 徘徊する者
第4話解説 移動と場所の学習
幼児はやがて歩き始める
身体そのものが「知的」である
柔らかいことの大切さ
「場所」の概念を理解する
本物の言語使用に向き合う
第5話 街に出る者
第5話解説 社会の中での言語獲得と理解
「はじめてのおつかい」からサービスロボットを考える
「統語的」関係から意味を定義する
分布意味仮説――単語の並びに潜む意味
データベース的な知識を使うロボット
第6話 苦悩する者
第6話解説 人工知能と社会構造の変容
人工知能に仕事を奪われる?
技術が発展すると「仕事」は変わる?
インターネットと人工知能の同盟関係
第7話 衝突する者
第7話解説 人工知能との関係性と倫理
人間のふりをするロボット
会話の文脈理解は難しい
関係性を育む
「ロボット工学三原則」って言われても
人工知能は規範をどう学ぶか?
ロボットと生きるための倫理
第8話 未来に向かう者
第8話解説 発達する自律的な人工知能の創成
自律的なロボットを創る
人工知能の感情と意識
アリスが「人間」になった理由
プロジェクト・アリス
引用文献

