「資本主義の預言者たち」 中野剛志 (角川新書 2015)

この本につき、紀伊國屋書店の書籍案内には以下のように書かれています。

「高失業率と低成長」が常態化する時代ニュー・ノーマル到来!!ミンスキー、ヴェブレン、ヒルファーディング、ケインズ、シュンペーター、5人の経済学者が預言する21世紀とは?ピケティの『21世紀の資本』をはじめ、スティグリッツ、ガルブレイスなどの最新経済論文を解説!

ということで、この1冊で近年の経済学を牽引した人たちの主張がざっと分かりそうな期待をもたせます。

この本は、著者が2009年に刊行した『恐慌の黙示録:資本主義は生き残ることができるのか』という著書に書かれた内容をほぼそのままこの本の本文とし、それに、プロローグ『「資本主義論」の現在そして過去』を加えて新しい本にした、ということのようです。このプロローグは非常に長くて、全体の20%程度になります。ここを読むだけで、最近の経済学者が資本主義をどのようにすべきと提言しているかが分かります。

プロローグ

著者は、新自由主義が、富の偏在と世界的な経済停滞をもたらした誤った考えだったとしており、プロローグで取り上げた経済学者達も、新自由主義が経済を破壊していること、そしてどうすべきかを提案しています。プロローグでは、ピケティ、サマーズ、クルーグマン、スティグリッツ、コーエン、ゴードン、フェルブス、ラゾニック、ロドリック、テミン、ヴァインズ、バレイ、ガルブレイス、コリンズ等の主張がコンパクトにまとめられており、現在の経済学をざっと知るにはとても便利です。

この経済学者達がどのような処方箋を出していたかを下に列挙します。

企業の技術革新、税制改革、公共投資の拡大、グローバル化を制限、国債の増発、財政赤字拡大、積極財政、社会保障の強化、最低賃金の引き上げ、累進課税、不労所得への課税強化、資源の再配分、速度を落とし持続的な成長

ざっと並べただけですが、誰が何を言ったかは、本書を読んでください。

なお著者は、財政出動を主張、構造改革・財政規律は不要といっています。つまり、供給過剰と需要不足の日本ではインフレの心配はない、自国通貨建てで国際を発行してデフレに陥っている日本では財政赤字の拡大を恐れることはない、と主張しています。本当かな?思いますが、経済の知識が不十分な私には何が正しいのかよく分かりません。

本文

本文では、5人の経済学者が取り上げられています。何十年も前に活躍した経済学者たちですが、既に、資本主義の問題点、限界を見通していたことがわかります。5人が資本主義をどのように見ていたかを簡単にまとめると以下のようになるようです。

ミンスキー:
資本主義は均衡せず、かならず金融危機を引き起こすと論じた

ヴェブレン:
世界恐慌の勃発前に、不可避的に危機を引き起こす金融資本主義の本質的な危険性をいち早く察知した

ヒルファーディング:
彼の時代に生じた金融資本という新しい社会的現実を受けて、経済理論を修正する必要があると宣言している

ケインズ:
市場均衡は極めて特殊な現象であり、資本主義経済とはダイナミックで不安定なものだと考えた

シュンペーター:
金融的要素も無視したわけではないが、むしろ産業の中に内在する自己破壊のメカニズムに注目した

内容の紹介はこの程度にします。詳細はこの本を読んでみてください。私の印象としては、経済学の知識を整理するにはとても役に立つ本だと思います。

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