「多元宇宙論(マルチバース)集中講義」野村泰紀(扶桑社新書 2024)
この本は、最新のマルチバース宇宙論が分かる本、という触れ込みです。確かに分かりやすい説明になっています。
マルチバースとは
この宇宙は、とても大きくてそれが宇宙に広がっている、と意味のないことを言い出したくなるくらい、私にとって宇宙とはまったく捉えようがないしろものです。それなのに、宇宙は我々の住むこの宇宙の他に別の宇宙がある、という考えも物理的に出てくる、といわれても困ってしまいます。
マルチバースに関連して、量子力学では、確率的に同時に存在するということをどう解釈すべきかという意味で「多世界解釈」があるそうです。この考え方は、私達の見る世界がどんどん分岐していく、というようなイメージで量子力学のレベルのお話ね、ということですますこともできます。
それに対して、マルチバースとは、我々の住むこの宇宙の他に沢山の宇宙ができる、あるいは存在するとしても不思議ではない、という説のようです。
著者は、上に書いた「多世界解釈」の世界を宇宙に置き換えて考えれば、これはまさにマルチバースで、マルチバースの現実味は量子力学から示唆されてきた、と書いています。
しかし、私には、量子力学における確率的な話である多世界解釈と、この本で言う確率的ではなく存在するという多宇宙との関係が分かりませんでした。多世界と共通の概念がある、というだけで、中身はまったく別物に思えるのですがどうなのだしょう。
さて、それはそれとして、マルチバースの件です。マルチバースといっても、「歴史だけ違う宇宙しかない」か、 「物理法則までも違う宇宙がある」か、両方考えられるのだそうです。物理法則が違う宇宙、というのは非常に考えづらいと思っていたのですが、どうやら、超弦理論ではそういう解が出てくるらしいのです。
そんなこんなで、この本を読み進めると、マルチバースはあり得るのかな、という気分になってきます。
超弦理論とは
超弦理論の根幹は超簡単に言えば、今まで物質をどんどん細かくしていくと最後は粒子、つまり点に行き着くと思っていたのを、「いやいや行き着くのは 紐 なんだよ」としたことだそうです。そして、超弦理論をもってすれば、ここまでお話ししてきたような、歴史が違う宇宙はもちろんのこと、素粒子の種類や質量、真空のエネルギー密度、さらには空間の次元すら違う宇宙が、とにかくいろいろぐちゃぐちゃっと存在するマルチバースというものが、方程式の解として自動的に出てくるのだそうです。
マルチバースは反証可能か
マルチバースが科学的であるかどうかは反証可能であれば科学的である、ということです。マルチバースについえては、沢山存在するという前提があればマルチバースでは曲率が負でなければならないので、将来この宇宙の曲率が正だという想定結果が出るとマルチバースが否定される。従って、反証可能だと言っています。
しかし、もし、もし将来我々の宇宙の曲率が負であることがわかると、これ以上反証できなくなります。これで反証できたといえるのでしょうか?
例えば、神は存在する、という説は「地球上の人間が全員死んだら神は無くなるから反証可能だと言える」という説明に近いような、、、ちょっと違うか、、、頭が混乱してきました。
目次
目次は以下のようになっています。
第1講 そもそもマルチバースとは何か
第2講 よくできすぎた宇宙の謎
第3講 予言されていたマルチバースの存在
第4講 無数に生まれる泡宇宙たち
第5講 マルチバース宇宙論の現在地
第6講 エンタメの中のマルチバース