「山岳大全シリーズ2 山岳気象大全」猪熊隆之(山と渓谷社 2011)

著者は「山岳気象予報士」と呼ばれる、山岳の気象に関して評価の高い人のようです。タイトルにあるように、この本は、登山において命に関わる非常に重要な気象について登山家たちに伝える本です。

登山する人が山の気象を理解できるように工夫された本です。今の天気の様子から今後を予想する「観天望気」の記載から始まっています。そして、山で活用できる天気予報に関する事柄を、かなり豊富に取り上げて節制しています。

そのため、登山する人はもちろん、気象予報士試験の副読本にも使えそうな感じがします。ただし、当然ではありますが、例えば「相当温位」についてはあっさりとした説明になっていたりするので、この本だけでは気象予報士試験には足りません。

そのかわり、天気図、予報図があったとき、気象状況を把握し、その気象条件で平地、山岳でどのような現象が起きるか、そしてどのように変化していくか、が分かるように工夫されています。又、何かを知りたい時、どの情報を用いればよいかも書いてあります。例えば、気象庁から発表される、短時間予測、短期予測、中期予測、長期予測、その他の資料の見方、使い方が書かれています。

又、気象の仕組みについて、第3章では、山の天気を崩す三つの重要な要素「上昇気流」「水蒸気の量」「大気の安定度」について書かれています。平地でも同じだが、山岳での状況がとてもわかりやすく書いてあります。更に、第4章では、高気圧、低気圧、前線を中心とした気象の説明もわかりやすい表現です。また、天気図の書き方の説明もあります。このように、この本を読むと気象についてかなり理解が進みます。

山での気象現象について、国内、海外の山岳別に説明されており、さすがに、登山する人向け、という感じがします。ただし、この本は出版以来かなり月日が経過していますので、ちょっと内容が古くなり、天気予報のシステム、通知などが現在と合わないものもありますので少し注意を要します。そうはいっても、細かいところを無視すれば今でも十分通用する本だと思います。

この本の目次は以下のようになっています。

はじめに
Chapter 1:観天望気
Chapter 2:天気予報の利用法
Chapter 3:山岳気象の3要素
Chapter 4:高気圧・低気圧と前線
Chapter 5:高層天気図の見方
Chapter 6:衛星画像の見方
Chapter 7:四季の山岳気象
Chapter 8:山域別の気象
Chapter 9:世界の山岳気象
Chapter 10:地球温暖化

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