「トンデモ本の世界」と学会・編(洋泉社 1995)

「トンデモ本」とは何か

この本は、かなり前の1995年の出版です。タイトルにある「トンデモ本」とは何かというと「著者が意図したものとは異なる視点から読んで楽しめるもの」だとのことで、要は、常識的に読もうとすると笑ってしまう本、ということのようです。又、「と学会」とはトンデモ本を研究するグループだそうです。

この本はと学会の初期の頃の本で、もう30年ほど前の本になります。この度、引っ張り出して読み直してみました。陰謀論、似非科学、疑似宗教というのは今もSNSを中心に大流行のようですが、この本を見ると、このような説は昔からちゃんとたっぷりあったことがわかります。

トンデモ本はいくつかにグループ分けできそうです。一つは、知識が不十分で支離滅裂なことが書かれている本です。この場合、ほとんどの人はそれと分かるものと思われます。しかし、科学的な装いをまとい書かれている本については普通の人には判断できないことが多くなり、時としてヒットしたりします。この種の本は沢山本屋さんに並ぶことになります。

と学会のこの本にはさまざまなトンデモ本が紹介されていますが、いくつか選んでここに紹介します。

正規の学問をマスターしているらしいが不思議な論理を使う

この例として竹内貴美子著の「小さな悪魔の背中の窪み」という本が書かれています。この竹内氏は京都大学で動物行動学を研究した人で、生物の行動や、人間の性格・行動に関する沢山の著書があり、いずれも相当売れているようです。この「小さな・・」では、血液型と性格の関係に関することが書かれているようです。昔は血液型ブームがあり、氏の本も相当貢献していたものと思われます。ただし、今もこの説を唱える人がそれなりにいるようではあります。

さて、竹内氏ですが、どうやら、ある説(それ自信は信頼できる説)を無制限に拡張して新たな説として述べる傾向があるようです。この本では、血液型の話題が中心のようですが、氏の著書については、遺伝子に関する話題も多い印象があり、人の性格や行動を決定する遺伝子についての解説のある本が非常に多いようです。個々の遺伝子が性格、行動、体型等の表現型とどう対応するか、という問題は今も研究途中だと思われ、なかなか特定しづらいもののようですが、それを決めつけてしまっていることがよく見られます。

学界で権威のある人が専門外の話題で笑えることを言ってしまう

この例として糸川英雄の「新解釈”空”の宇宙論」という本について書いてあります。糸川英夫氏は小惑星に名前が付けられるほど、ロケット工学で貢献したひとですが、専門外のことについては、相当面白いことをいっていたようです。

たとえ優秀な研究者でも専門外のことについては素人であり知識がないことはありうることでそれを非難する筋合いはないはずです。しかし、氏はどうやら不十分な知識の分野、例えば、半導体、量子力学、生物学などさまざまな分野での不正確な話題を繰り返していたようです。サービス精神が旺盛だったのでしょうか。

正しいか、間違いか

私自身もこのブログにさまざまな読書後の感想を書いていますが、自分の専門外(私に専門はありませんが)のことも生意気にコメントしています。へんちくりんな独自の説は書かないようにはしていますが、常に正しいことを書いているかどうかはまったく自信がありません。

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