マインドフルネスとはどのような瞑想か

ストレスを解消し、不安を取り除き、脳の活動を活性化するといった様々な目的で、種々の瞑想法が行われています。そのなかで、マインドフルネスは現在大変ポピュラーな瞑想法となっており、大手企業でも採用されているようです。マインドフルネスは、仏教の瞑想を参考に、そこから宗教色を取り除き最新の心理学の知見をあわせて作られた瞑想法とのことです。

マインドフルネスの具体的な瞑想方法については、たくさんの書籍などの情報がありますので、そちらを参照してください。例えば、吉田昌生著「マインドフルネス瞑想法 」や沢山の本があります。あるいは、ネットで検索しても非常に沢山のサイトが見つかります。

ここでは、マインドフルネスについて、その効果や手法、メカニズムなどを書きます。

マインドフルネスに期待される効果

マインドフルネスは非常に人気のある瞑想法ですが、何事にも良い点と問題になる点があります。下に整理してみます。

メリットとして次のようなことが挙げられるようです。

  • 不安、怒り、などをコントロールできるようになる
  • ストレスに強くなる
  • 集中力が高まる
  • よく眠れるようになる
  • 自信が持てるようになる

これらの効果があるとしたらとても素晴らしいことですが、話半分でも嬉しくなります。私の経験でも、確かに上に書いた効果がある程度あったような気がします。

デメリット、あるいは期待薄の点は以下のようなことかと思います。

  • 種々の難問が解けるようになる、正しい道を進むようになる、というのは期待しすぎ
  • 基本的な性格が変わるわけではなさそうだ
  • 自己肯定感が増すため自分本意な傾向が増すかもしれない
  • 人によっては控える方が良い(不安や抑うつを増す場合もある)
  • 坐禅とは異なり利他心は重視されてはいない

要は、人によっては効果がない、人によっては注意が必要、ということかもしれません。基本的には安全、という声が多く聞かれます。

マインドフルネスの瞑想方法

マインドフルネスとは、「今現在の自らの状態に意識を向け,良い悪いの評価をすることなく,ただ観察すること」なのだそうです。坐禅による瞑想と似ているところもありますが、違いもあるそうです。具体的には、以下のように行います。

先ず、椅子に座るか床に座るかして自分の呼吸に意識を向けます。そのうち、意識が呼吸からふらふらと離れ違うことを考えているかもしれません。それに気がついたら、呼吸に意識を向け直します。この作業を繰り返します。

意識を何か一つに、例えば呼吸に集中すると、気持ちが落ち着きます。そのため、あらゆる瞑想で気持ちの集中は基本になっています。ところが、往々にして心は一つに集中せずあちこちに揺れ動きます。マインドフルネスでの特徴は、意識が揺れ動いているときは、瞑想に失敗したなどとは考えず、何かについて考えていることを意識するだけ(その状態をモニターするだけ)で、又、呼吸に意識を戻します。

上では、意識を向ける対象は呼吸としましたが、呼吸が扱いやすいという理由だけで選ばれているようで、他の対象に意識を向けてもよいようです。とにかく、今の(過去でもない、未来でもない)自分の状態に集中する、という意味だそうです。又、座った状態に限らず、横になった状態、歩いているとき、皿を洗っているときなどいつでもできます。

マインドフルネス瞑想でのポイント、重視していることは、今の自分の体、心に起きていることに「気づく」ことです。何か頭に浮かんだときは、その度に、意識が他に向いたことに気づき、それに対応するということが繰り返されます。無理に無心になろうとか、リラックスしようとする必要はないようです。

再度書きますが、マインドフルネスは、意識が他に向いたとき素早くそれに気づき、対処できるようにする、というのが目的のようです。それを車の運転に例えると、滑らかに自然に運転している最中、何かが発生したとき必要とあれば即座に割り込んで最適な判断、運転ができる、ということかと思います。

マインドフルネスはなぜ有効なのか

マインドフルネスの瞑想の仕方が理解できたとして、ここからは、マインドフルネスが何故有効なのか、について、少し掘り下げてみます。とはいえ、「サピエンス全史」の著者ハラリもマインドフルネスを実践しているそうですが、ハラリの瞑想の指導者はマインドフルネスの理屈については詮索しない、と明言しているようであり、理屈・メカニズムを追求するのが正解かどうかはわかりません。

先ず、私たちは普段、体の制御や思考をどのように行っているか、異常があったときどのように対処すべきか考えてみます。あるいは、私たちの行動や思考にはかなりクセがありますので、それを治すにはどうしたらよいか、ということを考えます。

先ず、体について考えます。行動の例として歩くときのクセについて考えてみましょう。人が歩くとき、歩き方をいちいち考えなくても自然に歩いています。しかし、私のように年をとると(私は後期高齢者です)、無意識に前かがみになり腰が曲がった状態で歩いています。腰を伸ばして歩くには、自分の姿勢に注意し、腰が曲がってきたらそれを感知し、姿勢を戻すことを繰り返す必要があります。つまり、歩き方に注目し、姿勢をモニターし、自分のクセに気がつく必要があります。別の例を考えましょう。今、体に異常があり、どこかに痛みがあったとします。常日頃、痛みの場所、状況について自分で判断ができるように習慣ついていると、対応がしやすくなるでしょう。日頃、体をモニターできるように練習しておくことが有効なことがわかります。

思考についても、私たちはかなり自動的に考えていることは確かなようです。普段は殆ど無意識に暮らしています。普段は自動運転モードで、何か必要が生じたときだけ手動運転モードに変わるような感じです。私たちが普段は無意識に思考・行動していることについては別記事「私たちは自動機械か?」に書きましたので参考にしてください。

要は、私たちは知らず知らずに、落ち込んで、苦しんで、怒っているのです。意識して、落ち込もうとか、苦しもうとか、怒ろうとかはしていません。また、私たちには、認知バイアスという思考の仕方(考え方、感じ方)のクセがあります。それは誰しもが持つもので、自分で意識はしていません。程度の差により、個性にもなります。そのため、腰が曲がるという体のクセに対するときと同じように、自分の思考をモニターし、なにかに気づいたらそれを修正できれば非常に有効です。マインドフルネスは、そのようなクセを瞬時に気づくようになる、ということに役に立ちます。知らぬ間に脳が自動運転していることにはやく気づき、戻すことができると随分と問題行動は減る、悩ましい状態は減ることになる、と思われます。

最近、マインドフルネスについては、企業などが、社員のアウトプットを増やし成果を上げ業績を伸ばすためにこの瞑想を採用することが増えているようです。社員の成果と会社の業績アップのみに目が向くと、個人の安寧が損なわれかねません。仏教の教えでは、慈悲心を持つことそれ自体が心の安らぎを高めます。その辺りのバランスが大事なことかと思われます。

以上まとめると、マインドフルネスでのポイントは、意識の集中と気づきです。意識の集中というのはいかにも有効そうであり、実際、あらゆる瞑想の基本でもあります。しかし、マインドフルネスでは集中は単なる入口で、それよりも気付きの方の比重が大きいように感じます。これは、いわゆるメタ認知能力を持つことの重要さをいっています。    

さあ、試してみよう

興味を持った方、マインドフルネスに関する情報、書籍などはたくさんあります。ちょっと覗いてみてください。例えば、吉田昌生著「マインドフルネス瞑想法 」 等があります。マインドフルネスに関する情報は非常に多いので、ちょっと試してみようとしたときに、敷居の低い瞑想法です。

基本的には安全な瞑想法らしいのですが、人によってはネガティブな効果を生むこともあるようで、人による部分があることは意識しておくほうがよさそうです。

コメントを残す